探山訪谷[Tanzan Report]
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 No.362【最悪の山小屋――富士山御殿場ルート「砂走館」】
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砂走館
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「砂走館」の広告(ウェブサイトから引用)
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 誰しも一度は登りたいと思う富士山へ行くことになった。『山旅倶楽部』で計画したところ、総勢で12名が集まった。もちろん何度も登頂した方はあるものの、初めての方が大半を占める。7月・8月の混雑時は行動がままならないと考え、8月末から9月初めに設定。7月10日には山小屋と交通の予約を終え計画書を作成した。
 コースは須山ルートで入山し、御殿場ルートに合流したあと七合五勺の「砂走館」で宿泊。翌日は剣ヶ峰に登って吉田ルートを下山する。五合目でもう一泊し、北口本宮冨士浅間神社まで歩く予定である。一日目の登りの標高差が1,700mもあるので、事前のトレーニングにも注意した。もう一つの問題は高度順応である。私自身が急激な高度の変化に弱いため、その予防と対応も重要になる。
 そうした事柄を踏まえて登ったものの、宝永第二火口縁まで来ると徐々にメンバーの動きに差が出てきた。そこで、宝永第一火口(底)から「砂走館」へ遅くなる旨の電話を入れた。
 「昨日(8月31日)で営業を終えたため、宿泊はできません。泊まるなら、もう40分登った『赤岩八合館』まできてください」――電話に出た小屋のスタッフからは、耳を疑うような言葉が返ってきた。早くから予約しているのに、こんな返答を聞くとは思いもよらなかった。もし営業期間を変更されたのなら、事前に断りがこちらに伝えられて当然である。一ヶ月半以上の時間があるにもかかわらず、この間に先方からの連絡は一切なかった。宿泊当日の午後、しかもこちらから連絡して明らかになるなんて、呆れて怒りの言葉すら出てこない。
 求められる役割や社会的責任が感じられないこんな山小屋は、サービス業として失格だ。「館内からのご来光」を訴えるより、誠実な接客がまず必要なのではないか。もてなし内容の評価以前の問題である。
 この時点ですべきことは、全員がゆっくり休める場を段取りすること。すぐに七合四勺の「わらじ館」へ連絡を入れる。事情を話し、12名全員が泊まれるかを訊ねた。満室に近い状況だったものの、快く受入れていただいた。無理だったら富士宮ルートに変更せざるを得なくなり、宝永山にも登れなくなる。


すばらしい山小屋
「わらじ館」(御殿場ルート七合四勺)――上記のような経緯で急な依頼をしたにもかかわらず、夕食の準備やスペースの確保など、できるかぎりのきめ細かな応対が嬉しい。スタッフ間の連携やそれぞれの方の言動が気持ちよく、参加者の評価も高かった。翌朝は全員で見送ってくださった。
「佐藤小屋」(吉田ルート五合目)――当日の午後に、到着予定を問い合わせる電話がかかってきた。チェックインから施設・部屋の案内もこちらの動きに合わせてスマートにこなし、長年にわたって登山者から親しまれてきた理由がよくわかった。食事内容や対応力の高さが光っている。ご主人らの興味深い話もおもしろくよかった(2017.9.1〜9.3)。
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わらじ館
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「わらじ館」(左上部は「砂走館」)
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佐藤小屋
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「佐藤小屋」
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